中古住宅購入時は、建物の現在の性能がわからないため、建築士によるインスペクションが欠かせません。
建物を調査し評価する仕組みは最近開発されたものではなく、結構前から実務が運用されています。耐震診断などはその代表例であり、弊社では20年以上も前から耐震診断を実施して参りました。その技術を活かして弊社(リニュアル仲介本部)ではインスペクションを提供しています。
中古住宅購入時には住宅ローン減税が使えないものを使えるようにする手続きや各種補助金の活用提案を行っています。また住宅ローンでフラット35を利用する場合、フラット35の適合証明書の発行に関する調査も行っています。
平成30年4月から改正宅建業法における建物状況調査(インスペクション)に関する規定が施行されるため、にわかにインスペクションへの関心が高まっていますが、中古住宅購入時のインスペクションは目的を明確にして適切な建築士に、適切なタイミングで依頼しないと、各種補助制度が利用できなくなってしまいます。

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インスペクションとは?

インスペクションの目的

インスペクションの目的は大きく2つに分かれます。ひとつは改修費用を明確にすることです。
中古住宅とはいえ悪くなった部分が明確になって、適切な改修工事が実施できるのであれば安心して取引することができます。つまり、中古住宅のリスクとは、マイナスの部分を改修する費用と言い換えることができます。調査の結果、現行基準まで性能を引き上げるために1000万円以上必要な物件は建て替えた方が良いという判断ができます。反対に、築年数は古いものの売主が適切にリフォームで維持管理をしてきた物件はそれほど改修費用がかからないのでお得な物件と判断することもできるのです。
大切なのはインスペクションで建物の性能を明らかにし、物件購入判断材料とすることです。どれだけ改修費用がかかろうとも、改修費用を補うことのできる資金計画が成立すれば問題ありません。一番怖いのが、買ってから劣化が見つかって、劣化改修の費用を捻出することができないことです。

二つ目の目的は各種住宅取得支援制度を利用するための検査です。
例えば最大1000万円最長5年間建物の構造と雨水の浸入に対する保証が得られる既存住宅売買かし保険に加入するには、かし保険の検査基準に合格する必要があります。また、フラット35を利用するためにはフラット35適合基準に合格する必要があり、相応の築年数が経過した住宅で住宅ローン減税を利用するには耐震基準適合証明書が必要になります。
このように、各種住宅取得支援制度には制度を利用するための条件として建築士による検査に合格することが設定されていることが多く、それぞれの制度が個別の建築士の登録制度を設けていることから、単に建築士というだけでなく、いろんな制度の手続きができる建築士にインスペクションを依頼しないと、何度も検査が必要になり、時間もコストも無駄にかかってしまいます。

インスペクションは誰に頼めばよいのか?

中古住宅購入時に依頼する建築士の条件は下記になります。

  • 建築士事務所に所属している
  • 既存住宅状況調査技術者登録をしている
  • かし保険の検査会社に所属している
  • フラット35適合証明技術者登録をしている
  • 耐震基準適合証明書の発行経験がある

リフォーム工事を行っている建築士事務所へ依頼すると、基準を満たさなかった場合に改修工事費用の見積りも提示してもらえるので、無駄が省けます。
注意が必要なのは、建物の構造によって専門とする建築士が異なる、という点です。木造は得意だけどマンションはだめ、という方は意外に多いのです。また、同じ戸建てでも木造と非木造(RCや鉄骨)では取り扱いがかなり異なります。購入を検討している物件の構造を確認して、適切な建築士に依頼することが大切です。

どのタイミングでインスペクションを行えば良いのか?

インスペクションを実施する最適なタイミングは物件と取引の状況によって異なります。

<戸建て(木造) H12年6月以降>

所謂築浅と言われる物件です。購入希望の競合が懸念されるので、なるべく早く契約したいところです。
築浅物件は改修費用が高額になるリスクが低いため、物件内見時に目立った劣化がないのであれば、売買契約後のインスペクションでもそれほど問題になりません。売買契約を締結しなければその物件を買うことはできないので、契約前にインスペクションをする場合は、インスペクション結果を待つ間にその物件がほかの人に売れてしまうリスクを負う、という選択になります。

<戸建て(木造) S58年4月~H12年5月>

一般的に「新耐震」と言われる時期の建物ですが、耐震診断を行うと改修費用が必要だと判定される可能性が高い時期でもあります。取引の安全を重視するなら、インスペクション後の売買契約をお勧めします。ただし他の人に買われてしまっては元も子もないので、売買契約を優先する場合は、相応の改修費用を資金計画に組み込んでおいた方が良いでしょう。

<戸建て(木造) S56年6月~S58年3月>

最も注意が必要な年代です。検査済証など公的書類で「建築確認日」がS56年6月以降であることが確認できないと「旧耐震」扱いとなります。この年代の建物はそういった書類が失われていて、謄本でしか建築年月を確認できないケースが多いです。

<戸建て(木造) S56年5月以前>

「旧耐震」と言われる時期です。耐震改修工事費用も劣化改修工事費用も高額になる傾向があります。必ず売買契約までにインスペクションを実施して必要な改修費用を確認しましょう。売買契約後にインスペクションを実施して思った以上の改修費用がかかると判明しても、そのことを理由に締結してしまった売買契約を撤回することができないからです。

<戸建て(非木造) S58年4月~>

「新耐震」と言われる時期の建物です。建築士に劣化事象の有無を検査してもらえれば安心して購入できると思います。内見時の状況で売買契約前にインスペクションを実施するべきかどうか判断します。

<戸建て(非木造) S56年6月~S58年3月>

最も注意が必要な年代です。検査済証など公的書類で「建築確認日」がS56年6月以降であることが確認できないと「旧耐震」扱いとなります。非木造は耐震改修が現実的でないため、「旧耐震」扱いとなる物件の取得はあまりお勧めできません。

<戸建て(非木造) S56年5月以前>

非木造戸建ては耐震改修が現実的でないため、「旧耐震」扱いとなる物件の購入はあまりお勧めできません。

<マンション S56年6月~>

「新耐震」と言われる時期の建物です。築25年以上の物件は住宅ローン減税が利用できませんが、既存住宅売買かし保険に加入することで住宅ローン減税の対象とすることができます。マンションは戸建てと違って新築時の図書が保管されているケースが多いのですが、S56年6月~S58年3月の物件の場合は念のため建築確認日を確認しておいた方が良いと思います。マンションは改修工事を考えなくても良いので(管理組合が建物全体として修繕します)売買契約の後のインスペクションでも問題ありません。

<マンション S56年5月~>

「旧耐震」と言われる時期の建物です。各種補助制度が利用できないだけでなく、耐震改修などイレギュラーな修繕工事が発生し、臨時で工事費が徴収されるリスクがあります。

中古住宅取得時のリフォームの考え方

中古住宅購入時のリフォームは誰に任せても良いというわけではありません。事業者選びを間違うと、各種補助制度が利用できなくなります。
中古住宅購入時の工事会社の条件は下記になります。

  • 建設業許可を得ている
  • 建築士事務所登録を行っている
  • かし保険の検査会社登録を行っている
  • 既存住宅状況調査技術者が在籍している
  • フラット35適合証明技術者が在籍している
  • 工事賠償責任保険に加入している
  • 耐震改修や耐震基準適合証明書の発行経験が豊富

中古住宅取得時の住宅取得支援制度は、上手く利用できれば数百万円のメリットにもなります。目先の見積金額に惑わされて、上記の条件を満たさないリフォーム会社に依頼してしまうと、結果的に大きな損となる可能性が高いです。
リフォーム工事の取り扱いにも注意が必要です。例えば耐震改修工事ですが、耐震といえどリフォーム工事の1種です。耐震だけ建築士事務所に頼んで、他のリフォームは別の会社、というような分離発注は施工責任が不明瞭になるためあまりお勧めできません。(受けてもらえる工事業者も少ないと思います)
各種支援制度で必要になる証明書は、建物全体の性能証明であることが多いので、他社が行った施工も含めて責任を負ってくれる建築士を探すのは困難だと言えるでしょう。
中古住宅購入時のリフォームは普通のリフォームとは違うということをご理解ください。

スムーズに取引を進めるために

リニュアル仲介では物件検討段階で建築士が劣化調査を行う「事前インスペクション」を2物件まで無料で提供しています。(戸建てのみ)
建築士のインスペクションは有償(相場は10万円~15万円)ですので、「事前インスペクション」をご活用いただければ、負担なくじっくり物件選びを行うことができます。
また、既存住宅売買かし保険や住宅ローン減税のための耐震基準適合証明書など各種補助制度の対応もバッチリです。中古住宅をご検討の際にはリニュアル仲介をぜひご利用ください。

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